Seamamブログの2019年の記事から
先日、倉庫を掃除していたら出てきました。
昔、漁で使っていたマグロ針
エンボス加工のいぶし銀風仕上げ
夜光貝細工をやり始める2年ぐらい前だから、2007年くらいかな。
本物の釣り針で、『フィッシュフックデザインのネックレスを作ってみたい』。
という時期がありました。
結構色々作ったはずだけど、残っていたのがこの一本だけ。
後はみんな錆びてしまった。
右側のきれいなものは加工前の物。
で、当時ちょっと気になったのが、
『針の向きや意味合い』
<そして、今(2019年)>
最近また少しずつ作り始めた夜光貝フック
針の向きや意味合いをもう一度調べ直してみました。
≪針先の向きは≫
心臓に向けるために基本左向き。
≪意味合いは≫
・幸運をつかむ
・幸運を釣り上げる
・大切な人と離れない
・恋愛成就
・心臓にかかり命を落とさない
・海での安全祈願
・・・・あれ? なんか違う
当時(2007年)調べていた時に感じたものとは全然違う。
『幸運を釣り上げる』とか、
『海での安全祈願』だとか、
誰でも考え付きそうなことではなかったと思う。
ポジティブな願いを否定するわけではないけれど、
いかにも商業的すぎるというか、
後付け感が・・・ひどい。
決して、
『いつの時代の,どこの部族の言い伝えだけが正解』
とか言っているわけではない。
知りたいものは、『本来の意味』。
その時代の人たちがどんな思いを、どんな願いをかけていたのか。
それが知りたい
<本当の意味>
以前調べていた時は、すごく感慨深い意味合いだったと思う。
検索ワードは『フィッシュフック 意味』。
当時は100件ぐらいだったけど、今は100万件を軽く超えている。
ネットのワード検索数は当時(2007年)と今とでは4桁違う。
南太平洋の民俗学の資料だったと思うけど、今探してもまったく見つからない。
いつの時代の、どこの民族の話だったのかは、はっきりとしたことは覚えてない。
けれど、たしかこんな感じだったと思う。
≪針先の向きは、心臓に向けて左側≫
人の魂と呼ばれるものは、
心臓に宿ると考えられていた。
たとえ海で命を落としてしまったとしても、体から魂が離れていかないように、釣針で魂を掛けるという。
釣針によって体と魂が繋がっていれば、いつか体が陸に戻った時に、魂も一緒に陸地に帰ることができる。
当時調べた資料の中の一つにはそう書いてあった。
つまり、
命をつなぎ留めるのではなく、
命を落とした後に、
『魂をつなぎ留める』
ただ、これではすでに『お守り』や『願掛け』という気休めレベルではない。
『生きるか死ぬか』、常に死と隣り合わせの状況で掛ける願いだ。
海での事故、よほど運がよくない限り助からない。
海で仕事をしている人ならわかるはず。
<それならば何を願う>
この先は個人的な見解です
自分も漁師、ひとり小舟で海に出る。
同じ、海に出ていく者として、当時を想像しながら考えてみる。
小舟1つで南太平洋の島々に移り住んで行った時代。
現代のような予備知識・海洋情報・通信機器は無い。
もちろん動力船も無い。
今から数百年~数千年前、更にさかのぼると数万年前の話。
想像を絶するほどの航海に挑んでいたあの時代。
海で命を落としてしまっても、体が陸地に戻れることはまず難しい。
海底深く沈んでしまえば回収はできない。
普段の海上生活でも事故は多かったはず。
あての無い長距離の航海ならばなおさらだ。
怪我や病気
事故や遭難
『死』は突然、そして理不尽にやってくる。
それが海
一度海に出てしまえば、
生死問わず陸地に帰ることが難しいことはわかっている。
何十日も帆を張り、
何百kmも漕ぎ続ける。
おそらく、
ほとんどの人が二度と陸地を踏む事は無かっただろう。
『からだ』が陸地に戻れなければ、魂も戻れない。
そんな世界で願う思いとは何なのか?
『魂をつなぎ留める』
・・・これは、
生存に掛けた願いではないと思う。
それならば何を願う
願いは恐らくそこに行きつく。
事故が起こらないよう願うのではない、
命をつなぎ留めることを願うのでもない、
願いは、
たとえ、いつどこで命を落としても、
『魂はいつか必ず故郷に帰り、そして平穏であるように』
そう願ったのではないか 。
<その一歩を踏み出すために>
前人未踏の未開の地を目指すということは、
進む先に、陸地がある保証はどこにも無いということ。
フィッシュフックに思いや願いをかけるだけでは到底足りない
どこで命を落としたとしても
『魂はいつか必ず戻ることができる』
という絶対的な安心感。
そして
それを糧とし、死への不安を取り除くことで獲得できる
『何物をも恐れない』強靭な精神力。
そう願い信じ、自らを奮い立たせることで、未知の世界に旅立って行けたのではないだろうか。
おそらく、ほとんどの人が無謀な旅だということはわかっていたはず。
それでも、まだ見ぬ新天地を夢見て小舟で繰り出す大航海。
これは・・・
現代人には到底たどり着けない感覚かな。
↑これを踏まえてからの、現代は↓
『幸運を釣り上げる・大切な人と離れない・恋愛成就』
まあ、 いいんじゃない、願いはポジティブな方が。
だって、
『海で命を落とした時に役に立ちますよ』
なんて、お客さんに言えないもんな~。
日本人のルーツの一つでもある、南太平洋の歴史や民俗学。
かなり面白そう。
コロンブスなんて比較にならないほどの過酷な船旅。
こっちのほうがよっぽど『大航海時代』だ。
尊敬の念まで湧いてくる
もし叶うのであれば、彼らと同じ時間を過ごしてみたいな。